今年も『CMの季節』がやってきた

6ddee9a2.jpg今年も、またCMの季節がやってきた(と、僕は思う)。
毎年11月から全国で発表会が始まる『ACC CMフェスティバル』。今年も見に行ってきた。
かれこれ、もう10年以上毎年見続けていることになる。その年、日本国内で流れたCMの最高峰から、なかなか見ることのできないローカルCMまで一挙公開の一日である。
例によって札幌では全作品を見ることはできないものの、それでも3時間弱をかけてラジオとテレビの秀作CMを見せてくれる。

長いことこの発表会を見に行っていると、その年その年の”流行”が見えてくる。
きっとあなたも覚えておられることと思うが、一時関西風のCMが一世を風靡した時期があった。関西の企業、関西のクリエイター、さらには関西風のコテコテなCMというものがかなり流行った。でもそれもなかば”常套手段”になってくると、ドラマ仕立てになったり、「つづきはWebで!」とか「○○で検索!」と言ってみたり、最近ではそのCMが流れる番組の内容に合わせ、一見すると本編と見分けの付かないような企画を編み出したり、さらには異業種の企業や商品でひとつのキャンペーンをコラボしてみたり……、CMクリエイターたちの創作意欲はとどまるところを知らないように見える。

そんな中で、今年上位に残ったCMには割と直球勝負な作品が多かったような気がした。
以前ここでも書いた日本医師会のシリーズCM(映画『tokyo.sora』『好きだ、』の石川寛監督作品)も金賞に輝いた。「認知症と向き合う医師」「子供の心に寄り添う学校医」「医者が投げかけた心ない言葉…私たちは、あえて問題にしたい」。映像も音楽も奇をてらわず、少しだけ引いた視線で医療の現場というものを伝えようとする真摯さが伝わってくる。

今年のテレビ部門のグランプリは、マクセルのDVDのCMだった。
“未来の自分への手紙”というコンセプトでずいぶん長く続くシリーズなのだが、今回の受賞作は鹿児島の全校児童3人の小学校の最後の7日間を追ったものだ。特番向けに作られたものらしく、僕も初めて見た(上記のWebで公開中)。
こどもたちと、彼女たち(全員が女子)を囲む先生や村の大人たち。小さくともすみずみまで磨かれた校舎で、たくさんの人たちの愛情をいっぱい受けて学んできた彼女たちのありのままを、カメラは(そしてこのCMが訴えようとする商品は)記録していく。
131年という歴史に幕を下ろそうとしている小学校の最後の日々。決してノスタルジーな方へ行くことなく、でも確実に見る人の心を揺らしながら、いまこの瞬間をCMは描き切る。
「131年、最後の授業を終わります」。先生は「こんなつもりじゃなかったんだけどね」と言いながら、感極まる。その言葉の重みを映像が語る。
これはひとつの商品、いち企業のCMを越えたドキュメンタリーとして見事に通用する作品として、僕も心底、いいなと思った。僕は写真の人間だけど、ちょっと悔しいけれども、映像にこそできることってたくさんあると思っている。だからこそ、写真ならではの表現も映像に負けないくらいあると。
写真と言えば、富士フイルムの『PHOTO IS』も今年も入選していた。樹木希林さんが自らの写真にまつわる思い出を語る2本である。樹木さんは、年を取っていくことをうれしく思っているとCMで言っている。ここにも、前へ進むために自分の姿を撮っていくという写真のメッセージが込められている。

広告は、広告主が自らの商品や企業姿勢を世に広めるためのものだけでは断じてない。そこには広告主のメッセージをより広く深く伝えるために、たくさんのクリエイターが加わっているし、放送局もその力作を流すにふさわしいコンテンツを揃えようとしている。だからこそ、これからも見るに値するCM、人に教えたくなるCMが、数えきれぬ程たくさん出てきて欲しいと思う。

最後に。今年のベストCMカメラマンとして、写真家でもある上田義彦さんがその栄冠に輝いた。
資生堂やサントリーの「黒烏龍茶」で、いっさいの妥協をせずにその場の空気を余すことなく撮りきった姿をNHKのドキュメンタリーで見て、やはり写真のことを知っている人が映像を撮ると強いな、と感じた。
いずれ、どういうかたちになるかはまだ分からないけど僕も映像に挑んでみたい……、パッと見ただけでわかる上田さんの作品を見ていると、そう思う。


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