ドイツの短編映画を見る。

道立近代美術館の『FIX・MIX・MAX!』本展会場は、展覧会だけじゃない。
この土・日と、館内の講堂ではドイツの短編映画祭『ジャーマン・ショーツ KURZ & GUT ||(クルツ・ウント・グート 2)』も開催中。僕はドイツ映画と言うと、統一期の社会の変動をコミカルに描いた『グッバイ、レーニン!』くらいしか見たことがなく、しかもドイツの短編なんてめったにお目にかかれない。でも、内容を見てみるとなかなかのラインナップなのでぜひ見てみたいと、土曜の朝一番と夕方最後、2つのプログラムを見てみた。

『行くか残るか』……こちらはドイツが抱える社会問題に切り込んだシリーズ。
と言っても決して堅くなく、むしろアグレッシブに描いている印象があった。
敏腕銀行マンがある日出会ったホームレス。毎日小銭をあげるうちに、なんと彼は銀行マンの愛車を洗車し始めて……。温かなヒューマンドラマと思いきや、そこには日本でも顕著になった格差の問題が見えてくる、『小銭』。
ドイツのある地方都市、楽しみもなければ仕事もない。都会に仕事を見つけ、ふるさとを脱出しようとする男がバスを待つ時間を描く『脱出!』など、ドキュメンタリー風ではない、時にはアクションムービーのような見せ方だったり、時には恋愛映画を思わせる演出だったり。

『近くと遠く』……こちらは純粋なドキュメンタリームービー。
とにかく映像は淡々としている。でも、そのどれもがムダのない美しさに満ちていた。
かつての東独の秘密警察の機密文書が、切り刻まれた状態で発見された。その文書を復元するため、無数の断片をデスクに並べ、そのかたちや色から分類し、次にパズルのように合わせていく。気の遠くなる作業を黙々と続けるスタッフたちの姿を、ナレーションもBGMもなしで撮り続ける『東独国家保安省文書復元についての教材用映画』。
ここは東京、井の頭線の渋谷駅。終電間際だろうか。電車のドアには、向こうが見通せないくらいの乗客が群がる。しがみつく。さらに駆け込んでくる。顔をしかめたビジネスマンが、遊び帰りの女性が、押し込まれていく。駅員が笛を吹く。さらに突進してくる乗客。最後は4人の駅員が”尻押し”をして、ようやく扉が閉まる。電車が動き出す。
“痛勤ラッシュ”と呼ばれる東京の混雑は、世界にも例がないらしい。東京人の避けられない日常をワンカット、長回しで撮り切った『東京のある水曜日の夜』は、僕も10年近く使っていた駅だけに他人事ではなかったのだけど、幅2mほどのドアにこれでもかとしがみつく人の群れに、思わず笑いを抑えられなかったのだ。ドイツ人には果たして、”痛勤”はどんなふうに見えたのだろうか。

この他にも、”愛”をテーマとした『ユーアンドアイ』、異なる世代間のギャップと共存にスポットを当てた『若者と老人』。
明日も上映されるので(くわしくはこちらを参照)、できれば残る2つも見たいと思う。


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