『アメリカン・スプレンダー』

c5b7c06b.jpgスーパーのレジ待ち、友人の失敗談、自分のシアワセと不幸せ。そんな、街角の(どころか身内の)人の日常を描いて毎年一冊ずつ出版されているコミックがアメリカにあるそうだ。しかも、大ベストセラー。これは、その作者と登場人物たちが実名で登場する(本人も出ている)、まさに”slice of the life”な映画だ。


今から30年前。冴えない事務員の主人公…ハービー・ピーカーは、趣味のレコード漁りにやってきたフリーマーケットでイラストレーターと出会い、意気投合。そこで当時流行の「ヒーローばかり出てくるマンガはつまんない!」なんて話になり、だったら普通の人々のおもしろおかしい日常を僕が脚本にするから君が絵にしてくれ、ということに。スーパーで店員にいちゃもんをつける客、”オタク”を地でいく同僚。友人たちや街で見かけたふつうの、だけどちょっと変な光景だけで編まれた同人誌はやがてブームを呼び、ハービーはあのゴジラ松井も出た「デイヴィッド・レターマン・ショー」にも出演。ファンの読者を奥さんにして順風満帆だったのだが、思わぬ運命……ガンが彼の身体をむしばんで・・・。

決して幸せではないけれど、不幸せじゃない。それは、オフタイムの自分を持っているからじゃないかと僕はいつも思う。仕事ばかりじゃとてもではないが僕は身が持たない人間だ。だから、僕は自分の思っていることを語ったり、かたちにしたり、吐き出したりできる手段を持っていることに誇りを持っている。写真なり、文章なり。ハービーは病院のカルテ整理ばかりの毎日の中から、自然と自分をリセットする手段を生み出したのかもしれない。ある亡くなった患者のカルテに、こう書いてあった。「出生地・死亡地、共にクリーブランド。職業、事務員」と。どうせいつか死ぬのなら、誰に見せるわけでもないけれど、自分の生きた証だけは残したい。そんな思いは、時にこっけいで、時にシリアスなメッセージとなって、誰かに確実に届くのだ。
ふつうがいちばんおもしろい。日常はこんなにもエキサイティングだ。そう思うと、なにげない一日も、明日からまた一週間の仕事の毎日も、笑って過ごせそうな気がする。

■札幌・シアターキノでの上映は15日(金)で終了。各地で順次上映。>>>公式サイト


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